ドル防衛秘密合意報道
「未完成合意」が、その日経225後の半年を経て「完成合意」になったとしても、いったん市場がそれを試す動きに向かうといったことがあってもおかしくない気もする。=蒼い稲妻= 日経スクープの真意 ドル防衛秘密合意報道 8月28日の日経新聞が1面トップで「日米欧が3月の金融危機時にドル防衛で秘密合意」と報じ、為替市場で物議を醸した。 お読みになった方が多いと思うが、記事によると、いわゆるサブプライムローン問題をきっかけにした米金融不安でドルが急落した過程のなか、今年3月に日米欧の通貨当FX局がドル買い協調介入を柱とするドル防衛策投資信託で秘密合意していた―ようだ。 なお、そんな日経の記事について記者団に尋ねられた篠原財務官は「ノーコメント」、伊吹財務大臣は「当時は自民党幹事長だった。当時の財務相に聞いてほしい」などと、ともにお茶を濁すようなコメントを発している。 筆者は独自の取材で似た外国為替証拠金取引ような話はすでに聞いており、実際過去の当コーナーでも報じているはずだ。ともかく、日経の報道内容については、正直なところ意外感、「サプライズ」は感じない。 ただし、ひとつ興味深いのは「今年3月に合意していた」という古い話をいまになって、それも1面トップで大々的に取り上げたのか―ということだ。それだけがよく判らない。 とは言え、記事を読むと「再びドル不安が台頭する局面では日米欧が3月合意を踏資産運用まえた市場安定化策に踏み込むことが考えられる」、あるいは「10月のワシントンG7でも、為替安定の協調で確認する可能性が大きい」などといった文章が確認される。裏読みするなら、このあと再びドル安の不安が台頭するようなタイミングが訪れかねないことを当局が想定したうえで「リーク」したのかも知れない。 別の言い方をすると、米国を中心とした金融当局はそれだけの不安感、今後訪れるかも知れぬドル安進行に懸念を抱いている可能性がある。 いずれにしても、日米欧の通貨当局が今年3月以降も実際の市場介入に動くことはなかったため、「宝刀を抜く」ことはなく温存されたが、今回の報道でマーケット参加者に「宝刀の存在が明らかになった」ことになる。 警戒感がドル売りの抑止力にはなるだろうが、実際の介入が実施された場合には、逆に効果を殺ぐことになりかねない。報道は清濁併せ持った「諸刃の剣」であると考えており、評価がしにくいように思う。(鹿の角) 熾烈争い―米大統領選 全米メディアの話題を奪う ジョン・マケイン氏もなかなか一筋縄ではいかない。民主党のオバマ氏が中道・保守の投票が欲しいために外交に強いジョゼフ・バイデン上院議員(65歳)を選んだが、これで確実なことは、オバマ=クリントンという黒人、女性という組み合わせに比べて、オバマ氏は確実に「新しさ」を失った。それでもオバマ氏は、ジョン・マケイン氏の高齢・保守の固まりといったイメージに比べれば、十分新しいと思っていたのだろう。だが、ジョン・マケイン氏は、副大統領候補にアラスカ州の女性知事、サラ・ペイリン氏(44歳)を起用。「私は普通のホッケー・ママ(子供を地元のホッケーチームに通わせる母親)だった」。高校時代はバスケットボールの選手で地元の美人コンテストで優勝。アンカレッジのテレビ局キャスターを務め、その後漁業に従事。全米ライフル協会(NRA)終身会員。学校のPTA活動に熱中して政治の道へ。市長から06年に女性初、且つ最年少の同州知事に一気に駆け上がった。 ペイレン氏は、政治倫理法の制定や利益誘導型支出の撲滅などの改革に取り組み始めた。州内の支持率は80%と圧倒的。筋金入りの保守主義者でキリスト教右派エバンジェリカル(福音派)の信者で、妊娠中絶反対。今年4月に誕生した第5子が、胎児のころにダウン症であることが分かっても「すべての赤ちゃんがよい目的のために創造され、この世界をより良くする可能性を持っている」と出産を決意。我が身をさらしての筋金入りの保守主義者だ。長男は陸軍兵士で、イラクに赴く。「自分の長男と軍服を着て国に奉仕するすべての男女を誇りに思う」。さらに「米国女性の闘いは終わっていないが、今回限りでガラスの天井を打ち破ってみせる」と宣言。 それにしても「史上最も無名な副大統領候補」(米紙ワシントン・ポスト)の劇的なデビューは、前夜まで初の黒人大統領候補オバマ氏の指名に集中した全米のメディアの話題を奪った。これで、対決の軸は史上初の黒人大統領と安定した白人副大統領のセットアップか、安定した白人大統領と若い女性副大統領か、ということになる。新しさには、殆ど差がない可能性がでてきたのだ。政策論争でオバマ氏が圧倒的優位と言えない以上、オバマ氏の保守派への色目使いが、無用な混沌を呼んだとしか言いようがない。(石上) 人民元高に注目される 問われる市場スタンス 東京金融取引所の取引所為替証拠金取引(くりっく365)が、今秋システムを更改、取り扱い通貨ペアも25ペアとする。店頭取引より税制面で優遇される取引所取引。個人投資家の関心も高い、南アやトルコなどの高金利通貨を加え、期待に応えていけるか。大証参入後には熾烈な市場間競争が待っている。 一方、先日破綻したアーバン・コーポのCB発行による資金調達問題についての東証斉藤社長のコメントに危機感をもつのは筆者だけか。ジャスダック市場が、「既存株主に不利益となるような新株予約権の発行」などを挙げ、取引所の信頼性向上に向けたアクションプランを打ち出したのも、無縁でなかろう。初の中国企業上場だったアジア・メディアの、後味悪い上場廃止から日も浅い。東証の審査体制やその能力が疑われても仕方ない。市場全体が、内外から厳しい目に晒されている。 今週は、重要イベントが目白押しだ。米国では週末の雇用統計。また豪・加・英・欧州各中銀の政策金利発表もある。一方、韓国ウォンやマレーシアリンギなど総じてアジア通貨は軟調だ。そんななか、注目されるのは前述中国人民元の動向。当局のスタンスがインフレ警戒から景気下支えへと移行するかどうか。歯止めが掛かりつつある人民元高だが、年内1ドル=6.6元へ向かうのか注目してみたい。(和千) 当局者のシナリオによる演出 GSE危機の第2幕 8月後半から、約1カ月沈静化していた米住宅金融機関、いわゆるGSE(米政府支援機関)問題への懸念再燃をきっかけに、米株急落となった。果たしてGSE危機第2幕なのか。 18日NYでまず注目されたのは投資情報「バロンズ」の記事で、政府系住宅金融機関、GSEへの公的資金注入の可能性が報じられたこと。一方で、いくつかの証券会社もGSEの第3四半期中の資本増強は不可避といった見方を示していた。 では、GSEの資本増強が不可避で、それが公的資金注入といった形になるか。 米政府はGSE支援法案を成立させたため、公的資金注入は実現可能な手段である。ただ実現は可能だが、現実的にやれるかとなると別といった見方もじつは依然として根強い。 なぜ、公的資金注入が可能なルールを作りながら、実際にそれを行使するか微妙かといえば、それはきわめて政治的な理由が強い。キーワードはモラルハザード。依然として金融機関救済に対する抵抗感も強いため、政治的な「ホンネ」としては、公的資金は注入可能ながら、できることなら注入せずに済ませたいというところだろう。 注入を見切り発車して、それが11月大統領選挙にどう影響するかは微妙なところ。そうであれば、誰が見てもやむをえないと納得するような危機が起こらないかぎり、公的資金注入はできないとの見方が取り沙汰されている。 このように見ると、18日NYの動きは、後から振り返ったら金融市場がGSEへの公的資金注入を試す形の「GSE危機第2幕」の始まりだったとなる可能性もあるものだけに気になるところではある。 普通に考えれば、どうせ公的資金注入が不可避なら、安定した状況の中で速やかにやればいいと思うだろう。ただ、これはモラルハザードの問題をクリアーしないと政治的には決して簡単ではなさそうだ。安定した状況の中では、必ずしもGSEへの公的資金注入が無条件で賛成されるかは微妙だからだ。 このようなことは、政策当局者たちがよくよく理解しているだろう。 したがってうがった見方をすると、以下のような「危機の演出」があるのかもしれない。 =蒼い稲妻= 日本版本国送金法 徐々に骨格固まる 今年5月、読売新聞が「日本版・本国送金法」ともいえる政策を政府が検討している旨を配信、マーケットで大きな話題を呼んだ。 もちろん、当コーナーで筆者も当然フォローアップしたわけだが、その後の新聞記事などをみると徐々に骨格が決まりつつあるようだ。 ゴールデンウィーク期間中、5月4日の読売新聞は1面トップで「企業所得12兆円海外滞留、還流へ税免除検討」---などと報じた。 タイトルだけでも判る人は判るだろうが、記事を読むとこれは05年の米国で「1年限り」の時限措置として導入された、いわゆる「本国送金法(Homeland Investment Act)」とほぼ同じスキームだった。ちなみに、複数の外資系金融機関によると、05年は「本国送金法」の実施で米国の場合、最低でも年間で800億ドル規模の資金が米国へ還流した模様だという。 そんな「日本版本国送金法」だが、5月の読売報道では具体的な税制案など骨格がまだ触れられていなかったが、その後の報道をみると徐々に骨格が固まりつつある。 今月17日の日経新聞朝刊が1面トップで報じたところによると、「25%以上出資している海外子会社から受け取った配当は非課税」にする方針とされ、これが適応されれば海外展開を進める企業の大半が非課税の恩恵を受けられることになる。 一方、肝心の税率は05年の米国では従来35%だったものが最高で5・25%と大幅に軽減されたが、日本の場合はまだそこまでキチンとしたものはできていない。税収の減少を懸念する財務省との調整を入れる必要があると記事では報じている。確かに「落とし所」はなかなかに難しい。 ただし、案としては受け取り配当の一定額が非課税とするものが挙がっており、すでに同様の制度が導入されている欧州などでは9割程度が非課税となっていることから、日本の場合もその線が基準になるのではと推測されている。 いずれにしても、「日本版本国送金法」が実施されれば、前述した読売報道で12兆円、経産省の調査で17・2兆円(06年度)とも言われる海外現法が保有する内部留保が少なからず、国内へと還流されることになるだろう。為替市場における円高要因として注意する必要がありそうだ。